北海道中国会

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中国が日本とは別次元の「女性活躍大国」である意外な理由
3/11(金) 6:01配信 ダイヤモンド・オンライン

2021年中国共産党創立100周年記念のイベントの様子 Photo:VCG/gettyimages

● 中国の方が日本より女性の地位を重視?

 3月8日は国際女性デー(International Women's Day)だった。中国ではこの日が重んじられてきたが、日本では、これまであまり話題にされなかった記念日の一つだ。私が1980年代前半に日本に移住した当初、日本では記念日に大抵にぎやかなイベントを行うのに、なぜ女性の地位を守るためのこの重要な記念日が無視されてしまうのかと、かなり戸惑いを覚えた。

 調べてから、ようやく「これは社会主義圏の国々が大事にしている記念日だ」と悟り、日本社会の対応ぶりをそれなりに納得できた。とはいえ、国連が1975年(国際婦人年)にこの日を「国際婦人デー」と定めたので、日本もこの日に、もう少し記念日らしいイベントなどをにぎやかにやってもいいのではと思う。

 実は、日本に移住してから、もう一つ戸惑いを覚えたのは、妻の身分だ。

 移住当初、家族滞在ビザだった妻は、書類の職業欄に「主婦」と記入することに抵抗を覚えた。私と同じく上海外国語大学日本語専攻を卒業した妻は日本に来るまで、上海の大手貿易会社に勤め、給料も私のそれを上回っていた。それだけに、日本では夫に依存して暮らすことを宣言するかのようなこの書き方に、プライドとしても拒絶反応を起こしたのだ。妻の立場と気持ちを理解した私も同じ気持ちだった。

 中国人女性は、毛沢東の時代から女性が「天の半分を支える」というスローガンで、社会の運営の半分を支えようと鼓舞されてきた。そして、家庭の中ではむしろ「天の大半」を支えている。

 女性の地位向上の象徴として打ち出されたこのスローガンのもとで、女性の社会進出は文革時代に過激に進み、高圧送電線の架線作業の現場まで女性が進出した。社会地位の平等化を求める「天の半分を支える」理念は、場合によって単なる労働力の安易な供出につながってしまう問題も発生していた。こうした問題は、今ではかなり是正されたと思うが、まだ根絶できていない。

 一方、中国女性の社会進出と地位の向上においては、確かに大きな進歩があった。

● 中国が発展したのは女性の労働参加率の高さのおかげ

 これまで私はかなりの頻度で、日本企業関係者を連れて、中国視察ツアーなどで中国各地を回っていた。

 接待に出てきた女性官僚の多さに、多くの日本人は感心した。ある視察団は中国視察を終えて打ち上げパーティーを行ったとき、各地訪問中に、会見に出た中国側のメインの幹部が全員女性だったということが話題になって、「中国では、女性が天の全部を支えているよ」と中国人男性の私をからかった。

 ちょっと古いデータではあるが、私の手元にある米国労働省(United States Department of Labor)が2012年にまとめた統計レポートは中国人女性の社会における役割と存在感をかなり浮き彫りにした。このレポートは2010年の統計データを使っている。(その後、米国労働省がこの種の新しいデーター比較レポートを公表していないそうで、本記事ではこれを参考にする。)

 2010年は、ちょうど中国の国内総生産(GDP)が世界2位の日本を追い越し、その地位を取って代わった年でもある。それは、中国国民が数十年にわたって多大な努力と犠牲を払ってようやく手に入れた成果と言えよう。

 確かに人口規模が世界一だったこともその追い越しに貢献したと言ってもいい。しかし、前述の統計レポートで労働力規模(Labor force size)と労働参加率(Labor foice participation rate)のデータを見ると、人口規模が中国に迫るインドのそれと比べると、中国の方は男女全体の労働参加率が進んでいるだけではなく、女性の労働参加率も倍ぐらいリードしている。つまり、この統計は、中国の女性の労働参加率が高いから、中国の労働力規模を世界一の座に押し上げたということを教えてくれたのだ。

● 高い志を持ち働く中国人女性は多いが、ないがしろにされる人権

 確かに中国の男性も勤勉だ。前述の統計資料によると、中国の男性労働参加率は世界で最も高い80%グループに入っている。同グループのその他のメンバーはブラジル、フィリピン、インドなどである。

 しかし、中国の女性労働参加率は68%に達している。フランスの男性労働参加率が62%であることを考えると、中国人女性はフランス人男性よりも働き者だということになる。インドの男性は中国男性に劣らず労働参加率が80%に達しているが、女性労働参加率はわずか28%にすぎなかった。

 中国女性の努力と犠牲があったからこそ、中国の労働参加率がインドを引き離しアジア一の座を手に入れることができたと言えよう。

 ちなみに、オーストラリアやニュージーランドの女性労働参加率は60%、アメリカは58%、フランスは51%、日本は48%である。

 比較的新しいデータもある。北京師範大学労働力市場センターが作成した『2016中国労働力市場発展報告』によると、中国の女性労働参加率は約64%で、世界平均(50.3%)を大きく上回っているという。

 ただ、中国では、自国の男女労働参加率と女性労働参加率の高さに対して、「労働生産性が低いだけのことだ」「効率が悪い結果だ」といった批判も出ている。同時に、仕事と家庭の両立問題に悩む女性が多いという指摘も結構ある。

 中国の男性、特に南方の男性は比較的家事を手伝うというイメージがあるが、「家事の全部は女性がやる」(20%)、「家事の大半は女性がやる」(42%)という実際の統計を見ると、中国女性の大変さと努力に頭が下がる。蔡昉・元中国社会科学院副院長も「中国女性の家事に使う労働時間は男性の2.6倍で、世界的に見ても、(その負担が)高い水準にある」と指摘している。こんな大変な状況のなかでも、、「事業と家庭」を両立させようとする中国女性が70%もいる。

 ニューヨークには、女性問題専門家のシルビア・アン・ヒューレット(Sylvia Hewlett)氏が率いるセンター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー(Center for Work-life Policy、略してCWLP)という非営利シンクタンクがあった。同センターの調査によれば、職場ではトップの座を追い求めたいと高い目標を持つ中国女性は76%もいる。対して、米国女性では52%にすぎない。両者間にあるその差を考えると、中国女性がいかに大志(または野心)を持っているかがわかる。ちなみに、センター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシーは現在、センター・フォー・タレント・イノベーション(CTI)と改名されている。

 しかし、これだけ勤勉で、高い教育を受けた比率も高い中国女性だが、中国の一部の地域においては、いまだに人身売買、誘拐といった犯罪の対象にされている。基本的な人権も守られていない絶望的生存状態から解放されていないのだ。

 国際女性デーを記念することは、経済では世界2位の大国になったいまの中国でも、大きな意義を持っている。

 (作家・ジャーナリスト 莫 邦富)

https://news.yahoo.co.jp/articles/03aee590ea857bef971648cdb847ef8f704985de?page=1
2022-03-11