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「莫邦富の『以心伝心』講座」第359回「躬先表率」
7月31日付「時事速報」に掲載された「莫邦富の『以心伝心』講座」第359回「躬先表率」をご案内します。日本の大手企業の社長がなぜ電車で出勤するのかを議論します。

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第359回「躬先表率」

 15年7月29日、日本経済新聞・電子版に元伊藤忠商事社長だった丹羽宇一郎氏が書いたコラムがあった。「信なくして企業立たず」というタイトルで、「政経問わず、どんな集団、組織でも権力にすり寄るゴマスリやヒラメが多く、トップは『裸の王様』になりがちです」と警鐘を鳴らす内容だった。

 「社員は社長の背中を見ています。つまり、経営トップの顔でなく、日々の生活を見ているのです」、だから、「トップは社員とできるだけ目線を合わせるために努力することが大事でしょう」と丹羽氏が説く。

 黒塗りの専用車をよく使っている経営トップも、雨の日の通勤や満員電車の不愉快さも、できるだけ社員と共有することが大切だ。このように強調している丹羽氏は具体例として、「私が伊藤忠商事の社長、会長時代、そして今も電車通勤を続ける理由の一つは、多くの社員との意識のズレをなくしたいとの強い思いがあるからでした」と挙げた。

 なぜそこまでするのか、と聞きたくなるが、丹羽氏は「ガバナンスの根幹は、経営トップの倫理観に尽きます。その次にトップへの社員らの信用と信頼です。そのためには、日々の生活態度で裏表をなくすことです」と明快に答えている。つまり躬先表率だ。トップとは立派なことを言うだけではなく、自らも進んで模範的な存在になるべきだ。

 関西に長年住んでいたが、いまは上海に戻った友人がいる。その友人から聞いた話を思い出した。大阪に本社をもつある化粧品会社の社長が自宅から通勤するとき、いつも自宅からは社用車で移動する。電車の途中の駅からは社用車を降り、電車に乗り換えて会社に行くのだ、という。

 この話を聞いた私は最初、おそらく大阪市内の交通の混雑さに対する対策でもある、と思った。しかし、友達から次の話を聞いて、私はすこし動揺した。

 「電車の社内で社員たちとばったりと会ったとき、社員に対しては、あいさつや会話のなかで、社長という呼び方をするな、さん付けで呼んでいい、とその社長が求めている」

 果たしてこの話に出ている社長さんも丹羽さんと同じ考えで電車を利用して通勤するのかは、私には判断できない。しかし、日本には丹羽さんのように電車を利用して出勤する社長さんがかなりあるということは事実だ。おそらく、中国にも電車や地下鉄を利用して出勤する大手会社の社長がいるだろう。ただ、感覚的には、日本の方はこのような社長さんが多いような気がする。

 「1にも2にも、社員への強い信頼を持ち、裏表のない生活態度で経営にあたることこそ、社員の信頼を得る唯一の王道です」と強調する丹羽さんの意見にも、その生活態度にも拍手を送りたい。


躬先表率(gōng xiān biǎo shuài)コン シエン ピアオ シュワイ

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2015-08-04