北海道中国会

北海道と中国との文化交流、経済交流促進に努め、
北海道にいる華僑華人発展の支援及び北海道地域経済振興に寄与する
 
高市発言と琉球孤軍備増強の危機と陥穽
中国への不正義の補償法学忘却 との関係で*

吉田邦彦 (中国・広東外語外貿大学法学院・雲山特別教授)

1 はじめに
「中国と沖縄とを繋ぐ会Jが定着し、この新なパイプにより中国大陸か ら重慶爆撃や和高戦な どの被告者が次々、(中国を仮想敵とする)琉球弧の軍事要塞化の軍備増強が進む沖縄 を訪れて、それにストップをかけようとする草の根の動きは、注目すべき近時の反流であるが1、この際に、高市発言で険悪化する 日中関係の危機 的状況 における 日中友好回復の健 を提示したい (高 市政権 は、中国からの批判 にも拘わらず、その後も前のめ りに憲法 (特 に憲法9条)改正 の「軍事アプローチ (戦争アプローチ)Jの動きを止めようとしないが、私の専門を踏まえてここに説 く日中今後のあり方 を踏 まえて、早急に再考して欲しい)。すなわち論者 は、民法研究者だが、アメリカ法学の補償法学・Ff5係 修復法学 (そ れ は広義の不法行為法学の国際人権法的に最重要の分野)か ら学び2「日本の戦後80年Jでそれ を学び損ねてい ることを示し、高市発言もその延長線上であることに問題背景を探る。

2025年 11月 の高市早苗首相の問題発言を契機に日中関係 は悪化の 途を迪っている。しかし日本側は、高市人気の下に、その問題 の背景を探る動きが、「思考停止J状 態で もある。そ うこうするうち、2026年 に入、トランプ大統領 のベネズエラ侵攻、更にイラン攻撃で、「第二次世界大戦Jの 前夜 の様相も帯びてきた。同年3月にはそうした大統領を「平和の擁護者Jと讃るホフイトハウス訪問も行っている。更に、翌4月下旬に、戦後の長い「武器輸出禁上三原則 1の歴史3に、真っ向から反する海外武器輸出解禁の決定を行い、国際的な注目を浴びている4(そ こでも昨今の緊張悪化を背景に説 くだけで、戦後の経済発展・生活の豊かさ重視の「平和主義1を 内在的に掘り下げようとする動 きはない)。

しかし近時のこうした 日米のアプローチは「戦争アプローチ」であり、私どもが21世紀の重要な民法学の一分野として説く補償法学 。関係修復法学はそれとは対脈的な「平和アプローチ」であり、この忘却された分野 こそ、顧みられるべきことをここでは説いてみたい。

2 補償法学の要諦

補償法学で確立しているのに、わが国での理解 が全 く深 ま らないのは、以下の ことであ。問題意識 の根底は、いかに《対立・怒りの連鎖を戻 して、関係修復を図るか》だが、そこには、4段 階プ ロセスが求められる。第1は 、加害者からの過去 の不正義 (本件に即して言えば、かつてわが国が中国大陸で犯 した こと)を 詳細 に加害者側で (世代を超えて)認識することであり、第2は 、その歴史的責任をカロ害者側 が認識すること、第3は 、それを踏まえて、加害者が誠実な謝罪を行い、それを補う金銭補償を行うこと、第4に、その中には被害者の赦しが生まれて、これで《真の関係修復》が出来上がるとい理論枠組である5。以上の理論枠組は、補償法学上の基礎として確立している、簡単・明解なことだが、わが国で これが理解できておらず、そのような政治家、行政官僚 の例がほとん どである (例えば、故安倍首相の慰安婦合意 (2015年 )(当時は岸田外相)が 、慰安婦のその歴史的な悲惨 な事実 を歪 曲した上で、慰安婦問題を『お金の問題』 (10億円の支払い)に切り替えるのが良い例で、米議会の非難決議の際 (2007年 )にも、前年の日本の国会答弁でその強制性を否定しつつ、 (電話会談であれ)ホワイトハウスのブッシュ首相に謝罪するなどは、誠実な謝罪の仕方を理解できていないことを示している。類例は多数あり、2000年の花岡和解で5億の金額に故新美隆弁護士らは喜んだが、肝心の花岡事件の リーダーの歌醇氏は、鹿島建設の中国人強制連行の歴史的責任ないしそれを受けた誠実な謝罪を欠いていたことに、ショックのあま り寝込んだことも、補償法学の特色をよく示す)。

3補償法学からみた現下の議論の歪み

そして重要なことは前の段階 (上記『 第 1』から『第 4』の内の若い番号の方)ほ ど、その後の段階の前提 となるということで、その意味で、第1段階に関する「歴史教育」は重要だが、わが国では《歴史修正主義》が横行し、国民の多く、とくに若い世代がわが国の不正義 知らないことなどは関係修復》にとって深刻な障害であり、わが政府 (な い しその重要政治家)が 、731部 隊や細菌戦 を否定 し、南京虐殺を直視 しないな どは、この理論枠組か らして論外である。従来の不法行為(交通事故、医療過誤 、製造物責任な ど)と比較 して、補償責任 で重要なのは、(これまで不法行為 の機能で最 も軽視 され てきた)『加害者の後悔・悔悛』という側面が重視され (こ れ に対 ては、従来は『損害填補』が前面に出る 《損害賠償 中心主義》であつた)、 更に、法的責任とともに、道義的責任もそれ以上に クローズア ップ されるのも、本不法行為の特徴である。
琉球弧 の要塞化 に見 られ る軍備 増強 による軍事的解決 (その旗振り役として、中国側が問題視するのは、
高市首相 とともに、同政権 の小泉進次郎 防衛大臣であり、彼は、沖縄北部の世界 自然遺産登録 の際 (202
1年)に は、環境大 臣であつて、その自己矛盾的役割
を抱えることに注視 して欲 しい)で は「怒り・暴力の連鎖」を生むだ けであ り、却つて住民のリスクが増す (ドローン技術 が進 んだ昨今、真先 に ミサイル基地は攻撃に晒され る)こ とは近時の状況か らも明らかであり、その手法 を 日中に適用 してはならない。しか も琉球弧の地元住民 (琉球民族という先住民族である)の 頭越しに、民主主義不在 の形で軍事要塞化 が進 め られていることは、(先住民族の権利に関す る国連 宣言 (2007年)に反しており、先住民族法との関係でも々
しきことなのである。中国大陸の侵略という過去の不正義を有する 日本が、東ア ジア、否世界の恒久平和のために、どうしていつたらよいのかの道筋を考えたい。

4 むすび

武力行使ではな く外交が重要だ とい ことは屡々 (しば しば)《平和アプ ローチ》の中身 として語 られるが、ここで説いたことは、補償法学か らの従来の《戦後補償司法の批判的な捉え直 し》であり、それは、司法 ない し民法学の レベルで、国民一人一人が草の根的に考える、関係修復 に向けた 《平和アプ ローチ》 なのである。高市発言で中国側 が態度 を硬化してい ることに、針小棒大的に 目くじらを立て るな とい う日本の若者 が多いか も知れないが、考 直して欲 しい。発言撤回を中国側 は直接 的に求 めるが、高市議員は、村山談話当時に 日本の歴史的責任を否定する発言を国会で行い、その意味で上記関係修復 の理論枠組 の第1段 階を真つ向から否定し、最近の彼女の国会答弁でも、『 東アジアにおける昨今 の緊張の高ま り故』軍備増強が必要だとして、安易に状況設定するその前提部分 で、関係修復 を行 う努力が皆無である。そ して一― 関係修復 の 《平和アプ ローチ》ではな く――従来の政権 にも増 して、日本国憲法9条に悼る「集団的 自衛権」という 《軍事アプローチ》6で、(従 来の 日中国交回復の経緯 を顧みない)隣国の内政千渉 を して 中国を逆撫です る7ことが、彼女の問題発言か らうかがえる実質なのである。中国側が怒つているのは、言葉尻ではなく、内政干渉とともに、東アジアの平和秩序 を犯す、(かつての 中国に対する歴史的責任を忘却した)好戦的な 《軍事行為アプローチ》であり、そこには 《関係修復 の平和 アプローチ》 とは対昧的な根本態度である8ことを、われわれは真摯に直視する必要があるだろ 。

5 今後の見通し

近時の急変との関係では、力こそ全て』 (Might is
right)式 に国連無視 の専制的攻撃をカロえる、一昔前のアメリカ合衆国=イ スラエル の帝国主義的な行動 を支えるトランプ大統領を、ホワイトハウスで『 平和の擁護者』と讃える高市首相 の行動様式 (前 述)は、上記の関係修復 の理論枠組とは全く相容れず (易 にイ ランの側のイスラムの怒 りの負の連鎖は増幅し、こには真の関係修復などあり得ない)、現状認識としても
的を射ていないことに、注意しなければならない。補償法学は、冷戦 の終焉期 のデタントの1990年代 に生まれた ものであ 、当時 はアメリカ合衆国が世界の平和 を牽 引する《アメリカによる平和 》paxamericana)が 少なくとも理念的には、妥当してきた時を見ても現実と理念 とのズレがあった)。しかし近時の状況は、権威主義 ないし新たな 21世紀的《新帝国主義》がはびこり、アメリカ合衆国 (トランプ政権)自体が、《アメ リカ 自国中心主義》 mm(Make America Creat Again!))を 標榜し、西半球 中心主義にシフトし、地政学的な状況が大き く変わつてきてお り、日米安保 を軸 に「集団的自衛権」か ら台湾介入するという高市発言 の見取り図 自体が、時代錯誤 的になつているのかも知れない。

トランプヘの追従宜しく、さんざん軍事費増強に努めさせ られ、挙げ句の果てには、東アジアはアメリカの守備範囲ではな くなってお り、どうぞ 日本が主体的に(勝手に)やてくれJなどと匙を投げられるのは、最悪のシナリオである。しかもイラン戦争を見ていても、ミサイル基地 を増強していても、今のAI中 心の軍事攻撃に歯 が立たないとなると、一体何のための国費の無駄遣いかと、近時の安易な章備増強の事態を真剣に考えた方が良い。逆にこういうときこそ、真の関係修復の道 である補償法学の展開を、今だから検討すべきなのである (そういう意味で、日下新たに動 き出そうとしている、略奪 中国文化財 の返還 に関する 日中共同の草の根の動きはもつとクローズアップ されて良い。そこで も真価を発揮するのが、道義的補償行為なのであ る (1954年ヘーグ条約以 降の 関連 条約 以前に「略奪Jがなされた とい う、法的に遡及性不可(nOnretroactivity)の 原則があ り、ナチのホローコースト略奪文化財 については、アメリカ美術館 な どを中心とす る草の根の(道義的)返還原則 の積 み重ねがあり、昨今 のマ クロン政権 による西アフリカか らの略奪文化財一括返還立法の制定 (2026年 4月 )が 注 目され、こ うした世界標準 に変化 にわが国 も敏感 でなければならない9)。
2026-06-23